国語

人間と、動物か機械か

授業の中で、生徒に「人間らしさとは」と尋ねることがあった。「理性的」とまとめられるような回答と、「感情的」とまとめられるような回答に分かれるだろうと想定したのだが、「やらなければいけないことをやらずに別のことをする」「欲望のまま行動する」…

酸漿に似た富士と花――太宰治『富嶽百景』

授業のために、太宰治『富嶽百景』を読んでいるのだが、この小説の最後の場面。 その翌る日に、山を下りた。まづ、甲府の安宿に一泊して、そのあくる朝、安宿の廊下の汚い欄干によりかかり、富士を見ると、甲府の富士は、山々のうしろから、三分の一ほど顔を…

母と亡父の往復書簡、その文体と「打ち言葉」

実家に帰り、母と亡き父の残っている手紙を母が出してきて何枚か拝読した。「この手紙がつくのは三日頃だろうから、僕はまだ山にいるわけだ。信州の山は夜は冬みたいだそうです。」「航空券は早めに取ってください(君は少しのんびりだから)」などという文…

大学入学共通テスト2021を解く

総評 共通テストを解いて感想を述べてみた。入試の専門家ではないから、個人的な感想になるが、難易度はこれまでとさほど変わらず、これまでどおりの勉強の成果がこれまでどおり出るような試験だったのではないか。解答時間は受験生にはやはり厳しいものだろ…

死者と語らう――夏目漱石『こころ』

生徒たちの『こころ』の読解の様子を見ていると、案外、Kの自殺の原因を、「先生」=「私」による裏切りやそれに伴う失恋などではなく、K自身の信念にK自身が背いたことに置く。「教科書」どおり(?)信念に反して矛盾を抱えてしまったこと、その矛盾を…

「現代文単語/キーワード」に関する参考書について、今のところのベスト

読解 評論文キーワード 改訂版 ――頻出270語&テーマ理解&読解演習54題 (教科書関連) 作者:哲也, 斎藤 発売日: 2020/10/09 メディア: 単行本(ソフトカバー) 私が高校生だった頃は意識したこともなかったのだが、世の中には「現代文単語」とか「現代文…

Google Earthで『土佐日記』を追う

暇つぶし、ではなく教材研究の一環として、Google Earthで『土佐日記』に登場する地名をチェックしてみた。そんなに凝ったものではないし、旅程は教科書や資料集なんかにも図入りで載っていて、特に新たな発見があるわけではないのだが、行ったことのない土…

中学生が一人で国語を学ぶための本

不登校歴の長い中学生に、一人で勉強するための問題集がほしいと言われ、仕事の帰りに書店で探した。漢字なんかは東京ベーシックなどインターネット上にある教材で十分に自習できる。その子のレベルに合わせて、その子でも読めそうな説明・解説のついた、文…

塾講師が勧める学習法まとめ:高校国語古文編

はじめに→古典学習について過去に書いた文章。理論上、古文常識、古文単語、(敬語)、文法の順に土台となる。その上で主語を見破る力を身につければ古文は読める。が、音読や通釈など、学校でやるような地道な学習による古文慣れも、間違いなく影響する。古…

塾講師が勧める学習法まとめ:高校国語知識編

●漢字基本的に書いて覚える。一冊を何周も学習する。2〜3周か回したら書けないものにチェックし、書けないもののみを繰り返す。漢字の学習は語彙の学習にもなる。特に国語が苦手な場合、知らない熟語が出てきたならば漢字の練習をするだけでなく意味を調べ…

入試国語現代文への二つのアプローチ――『現代文 標準問題精講』

現代文 標準問題精講 作者:神田 邦彦 発売日: 2015/07/22 メディア: 単行本 私は自身の勉強として現代文の参考書を用いたことがない。現代文で困ったことがないからだ。他の教科に時間をかけた方が効率が良かった。しかし、そうしたこともあってか、進学塾で…

夏目漱石『坊っちゃん』の「だから」はなぜ「日本文学史を通して、もっとも美しくもっとも効果的な接続言」なのか

日本語学の演習のレポート。 1,はじめに 「親譲の無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」から始まる夏目漱石『坊っちゃん』の冒頭部は名文、名書き出しとして広く親しまれているがで、この小説の結尾の部分もまた、冒頭部ほどではないにしても、名文と…

村上春樹「バースデイ・ガール」について 国語科の観点も少し

バースデイ・ガール 作者:村上春樹 発売日: 2017/11/30 メディア: 単行本 先日、教職課程の講義中に行われた模擬授業において、村上春樹の「バースデイ・ガール」を扱った学生がいた(あらすじなどはwikipediaなどを参照してほしい)。村上春樹編・訳による…

受験記:古文の学習について(漢文について追記)

「古文は外国語」という人がいるが、まずそれは嘘だ。古文はあくまで昔の日本語である。間違えてる人を何人も見てきたが、受験古文でするのは「日本語訳」ではなく「現代語訳」である。古文と現代語の間には確かな繋がりがある。英語の学習のように単語帳や…