教えること

国語教師、『「若者の読書離れ」というウソ』を読む

「若者の読書離れ」というウソ (平凡社新書1030) 作者:飯田 一史 平凡社 Amazon 手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて日常生活が不自由になっていく病気であるALS(筋萎縮性側索硬化症)の特効薬の特許をもつ大富豪が安価な市販化を渋…

人間と、動物か機械か

授業の中で、生徒に「人間らしさとは」と尋ねることがあった。「理性的」とまとめられるような回答と、「感情的」とまとめられるような回答に分かれるだろうと想定したのだが、「やらなければいけないことをやらずに別のことをする」「欲望のまま行動する」…

酸漿に似た富士と花――太宰治『富嶽百景』

授業のために、太宰治『富嶽百景』を読んでいるのだが、この小説の最後の場面。 その翌る日に、山を下りた。まづ、甲府の安宿に一泊して、そのあくる朝、安宿の廊下の汚い欄干によりかかり、富士を見ると、甲府の富士は、山々のうしろから、三分の一ほど顔を…

文具放談

もう何年も前のことだが、学生の時分、教育実習に行った学校で、子どもたちがみんな、テープのりを使っていた。スティックのりはわずかに生き残っていたが、液体のり等を使う者は皆無であった。私などは、テープのりの存在は知っていたけれども、かつて、彗…

通学路は学校か?

制服の話 最近、学校制服が何かと話題になっている。私自身、制服のない、完全私服校を出て、こうして立派な大人になったわけで、制服指導の意義のよくわからないところもあるのだが、一方で、きちんとした格好の意味・価値を尊重する気持ちにも共感できるし…

「学校の勉強だけで」「一つの参考書を完璧に」/複数の正解の困難

少なくとも公立の進学校の教員たちはよく、「学校の勉強だけで」難関大にも行けるのだと口にし、実際に、塾なんかには通わずしかも学校の教材だけで難関大に合格していく人もいて、恐ろしいことだと思っていたのだが、しかし自分で難関大の問題を解いている…

知識人と大衆のジレンマ

知識人と大衆の関係には、解決困難なジレンマが存在しているようだ。有り体に書いてしまえば、大衆に合わせていては知識人の高度な知的営為は困難だが、大衆を無視していては、やはり知的営為を維持することはできないというもので、このジレンマには様々な…

恐怖指導の思い出

ここ数日、noteの更新を(現実には勉強を)サボっている。積み重なる実感のない積み重ねは厳しい。その点、学生の時分というのは恵まれたもので、しかし、その頃も私は積み重ねに精を出すようなことはたいしてなかったなぁと思い出す。 時たま口にしつつ、「…

大学入学共通テスト2021を解く

総評 共通テストを解いて感想を述べてみた。入試の専門家ではないから、個人的な感想になるが、難易度はこれまでとさほど変わらず、これまでどおりの勉強の成果がこれまでどおり出るような試験だったのではないか。解答時間は受験生にはやはり厳しいものだろ…

死者と語らう――夏目漱石『こころ』

生徒たちの『こころ』の読解の様子を見ていると、案外、Kの自殺の原因を、「先生」=「私」による裏切りやそれに伴う失恋などではなく、K自身の信念にK自身が背いたことに置く。「教科書」どおり(?)信念に反して矛盾を抱えてしまったこと、その矛盾を…

「現代文単語/キーワード」に関する参考書について、今のところのベスト

読解 評論文キーワード 改訂版 ――頻出270語&テーマ理解&読解演習54題 (教科書関連) 作者:哲也, 斎藤 発売日: 2020/10/09 メディア: 単行本(ソフトカバー) 私が高校生だった頃は意識したこともなかったのだが、世の中には「現代文単語」とか「現代文…

Google Earthで『土佐日記』を追う

暇つぶし、ではなく教材研究の一環として、Google Earthで『土佐日記』に登場する地名をチェックしてみた。そんなに凝ったものではないし、旅程は教科書や資料集なんかにも図入りで載っていて、特に新たな発見があるわけではないのだが、行ったことのない土…

「オンライン授業」についてのメモ(コロナ禍で)

オンライン授業について。様々なアプリケーションやサービスが用意されているのだが。一つ思うのは、それらを使って、従来の授業をオンラインで再現しようとする必要はない、というか、そうしようとすべきではないのではないか、ということだ。 従来の、オフ…

中学生が一人で国語を学ぶための本

不登校歴の長い中学生に、一人で勉強するための問題集がほしいと言われ、仕事の帰りに書店で探した。漢字なんかは東京ベーシックなどインターネット上にある教材で十分に自習できる。その子のレベルに合わせて、その子でも読めそうな説明・解説のついた、文…

塾講師が勧める学習法まとめ:高校国語古文編

はじめに→古典学習について過去に書いた文章。理論上、古文常識、古文単語、(敬語)、文法の順に土台となる。その上で主語を見破る力を身につければ古文は読める。が、音読や通釈など、学校でやるような地道な学習による古文慣れも、間違いなく影響する。古…

塾講師が勧める学習法まとめ:高校国語知識編

●漢字基本的に書いて覚える。一冊を何周も学習する。2〜3周か回したら書けないものにチェックし、書けないもののみを繰り返す。漢字の学習は語彙の学習にもなる。特に国語が苦手な場合、知らない熟語が出てきたならば漢字の練習をするだけでなく意味を調べ…

塾講師が勧める学習法まとめ:高校英語編

私が自身の受験経験と数年の塾講師経験と何冊かの書籍から考えだした高校英語・大学受験英語学習法の現時点でのまとめである。しかし結局、誰にとってもベストの方法などあるはずもなく、自身が最も意欲的に取り組める方法で学習することが成績向上につなが…

入試国語現代文への二つのアプローチ――『現代文 標準問題精講』

現代文 標準問題精講 作者:神田 邦彦 発売日: 2015/07/22 メディア: 単行本 私は自身の勉強として現代文の参考書を用いたことがない。現代文で困ったことがないからだ。他の教科に時間をかけた方が効率が良かった。しかし、そうしたこともあってか、進学塾で…

村上春樹「バースデイ・ガール」について 国語科の観点も少し

バースデイ・ガール 作者:村上春樹 発売日: 2017/11/30 メディア: 単行本 先日、教職課程の講義中に行われた模擬授業において、村上春樹の「バースデイ・ガール」を扱った学生がいた(あらすじなどはwikipediaなどを参照してほしい)。村上春樹編・訳による…

受験記:古文の学習について(漢文について追記)

「古文は外国語」という人がいるが、まずそれは嘘だ。古文はあくまで昔の日本語である。間違えてる人を何人も見てきたが、受験古文でするのは「日本語訳」ではなく「現代語訳」である。古文と現代語の間には確かな繋がりがある。英語の学習のように単語帳や…