やまむらはじめ『夢のアトサキ』

 大学に入って、夏の盛り、地元のブックオフで出会ったのがこの漫画、『夢のアトサキ』です。やまむらはじめといえば近頃アニメ化された『神様ドォルズ』が有名なのかもですが、この漫画はそっちとは違い、バトルとかファンタジー要素とか皆無の、大学生を主人公とした青春物の連作短篇集。
僕は、パラッとページをめくって目についた都緒里先輩がかわいかったので買ったわけですが、これが非常にヒットしまして。僕の通ってるところ大学じゃないんじゃねって気分になったわけです。ここに描かれているのは一種理想の大学生活かもしれませんな。恋人がいたりー気の置けない友人たちと卓を囲んだリー誰かを好きになったリー夢を追ったリーという。まぁつまりそういう漫画です。絵が良くて(エロい絵がまた良い)、それでこの内容で、青春物好きな人は読んで損はないのでは。質の良い漫画です。

 『夢のアトサキ』というタイトルなので、ほとんど恋愛で占められている漫画ですが「夢」について読んで思ったこと。
 個人的にですが、大学って、夢を見て、追っていられる最後の場所である気がしているのです。大学出たこと無いので想像ですけど、就職して仕事ーとなると、長期休暇なんかもほとんどないのでしょうし、夢見てる場合じゃないんじゃないかというか、見ることはできても追うことはできないんじゃないか、というか。この漫画に湯浅信昭という「大人」が出てきます。彼はプロのイラストレーターで、同じく登場キャラクターである乙部くんの夢=絵描きを叶えた後のような存在であるわけですが、これが良い対比になっているように見える。彼の「いーよなー学生は失うもんが少なくて」とか、プロの世界が自由のないものであることを乙部くんに教えるシーンとか。なんというか、夢が夢であるのはそれを追っているときだけなんじゃないかなー、って思いますよね。そして、敗れようと叶おうと、社会に出たら大変なんだろうだなーと思いました。

最近現実しか見えない僕ですけど、この漫画を再読しちゃいまして。もう少し頑張らなきゃなあと思いました、現実から逃げるために。あと彼女彼女欲しいですね。