2014-01-01から1年間の記事一覧

pura vida / the ridge――『アンナプルナ南壁 7400mの男たち』

アンナプルナ南壁 7400mの男たち(字幕版) 発売日: 2015/06/02 メディア: Prime Video 期待していた程おもしろくなかった。というのも僕は『アンナプルナ南壁 7400mの男たち』というタイトルを見て素直にアンナプルナの雄大な姿を期待していたのだ。しか…

“市川由衣の映画”――安藤尋『海を感じる時』

海を感じる時 発売日: 2015/04/03 メディア: Prime Video 池松壮亮と休憩中に懇談。洋が「女を殴る」ことについて、洋がイヤな男にしか見えなかったら映画として辛い、と私は危惧したが、池松はその「匙加減」には確信があるようだった。「ボクが邪魔をしな…

「Our Planet」と「My Planet」/演劇を記録すること――ままごと『わたしの星』

8月25日、観て来ました。高校生演劇とか、そういうのを抜きにして大変良かった(巧みな戯曲だったし、高校生というネームバリューのいらない俳優ばかりだった)。感想を書いておきます。 1,「Our Planet」と「My Planet」 『わたしの星』の舞台は近未来の…

『演劇をめぐる大雑談会vol. 5 ゲスト藤田貴大』メモ・感想

『演劇をめぐる大雑談会vol. 5』という、早稲田の水谷八也教授の企画している講演会に藤田貴大が来るというので、聴いてきました、のでメモと考えたこと(発言は正確な引用ではない場合があります。すいません……)。 隣に後輩の女の子が座っていたのだが、藤…

ミノタウロスなき〈迷Q〉——Q『迷迷Q』

Q『迷迷Q』@こまばアゴラ劇場、4/25観劇。 Qの前作『いのちのちQⅡ』を私は、〈O〉の演劇として観た(「Qは「形」を問う――Q『いのちのちQⅡ』」)。「ニンゲンの世の中」すなわち地球と、それに依存した暦、時計、社会制度、そして再生産の「形」、〈O〉。『迷…

シベリア少女鉄道『あのっ、先輩…ちょっとお話が…ダメ!だってこんなのって…迷惑ですよね?』

シベリア少女鉄道『あのっ、先輩…ちょっとお話が…ダメ!だってこんなのって…迷惑ですよね?』を観たので感想。 テレビドラマ的にシリアスな物語(三角関係とか、先生と生徒の恋愛、未成年の年上男性とのセックス、とか)を、シベ少特有の高度にくだらない笑…

範宙遊泳『うまれてないからまだしねない』

範宙遊泳『うまれてないからまだしねない』、東京芸術劇場シアターイーストで、観て来ましたので感想のメモ。 良い。センスの良いユーモアと、鋭さ。僕の読み取れた限りの本作の持つテーマに目新しさはそれほどないかもしれないが、見せ方はかなり洗練されて…

夏目漱石『坊っちゃん』の「だから」はなぜ「日本文学史を通して、もっとも美しくもっとも効果的な接続言」なのか

日本語学の演習のレポート。 1,はじめに 「親譲の無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。」から始まる夏目漱石『坊っちゃん』の冒頭部は名文、名書き出しとして広く親しまれているがで、この小説の結尾の部分もまた、冒頭部ほどではないにしても、名文と…

山戸結希『5つ数えれば君の夢』

5つ数えれば君の夢 発売日: 2014/12/03 メディア: Prime Video 山戸結希監督、東京女子流主演の映画『5つ数えれば君の夢』。東京女子流が最大の目当てだったわけですが、監督の山戸結希がサブカル界隈で話題になってた気もしたので、観に行きましたので軽く…

「遺言」について

学生だった頃、講義で提出したレポート。ひどいものだ……。 --- 文芸評論家・井口時男は、鮎川信夫「死んだ男」の書き出しを引用しつつ、戦争文学について以下のように述べる。 生き延びた者が死者によって問いつめられる。生き延びた者は,問いつめる死者へ…

川上未映子×マームとジプシー(東京国際文芸フェスティバル2014クロージング!)

東京国際文芸フェスティバル2014(というものがあったわけですが、みなさんご存知なんでしょうか。僕は知ってましたがスルーしました)のクロージングイベントに行きましたので少し感想を、書き散らしていますがお許しください。主に、というか全部川上未映…

「優しいサヨクのための嬉遊曲」の美少女について

優しいサヨクのための嬉遊曲 (新潮文庫) 作者:雅彦, 島田 発売日: 2001/07/30 メディア: 文庫 「ふふ、考えても駄目よ。考えるっていうのは悩むことなのよ。悩んだり、苦しんだりしたくなかったら考えない方がいいんですって」 「優しいサヨクのための嬉遊曲…

「#ゆーふらいと」 テラシマユフから寺嶋由芙へ

♯ゆーふらいと[初回限定DVD盤] アーティスト:寺嶋由芙 発売日: 2014/02/26 メディア: CD 昨年の五月だったか、テラシマユフがBiSから脱退した。彼女はBiSのエースだったわけで、脱退はBiSにとってもある程度の痛手であっただろうが、それはテラシマユフにと…

文学に入門するための本

間違えて文学部に入ってしまう、という事態は実は往々にしてあり得る。文学部にしか通らなかった、国語が好きだから、数学が嫌いだからーーそんな「だから」は、実はありふれているのではないか? そうした、間違えて文学部に入ってしまった人に、そして、間…

きたまり+Offsite Dance Project共同プロデュース『RE/PLAY(DANCE Edit.)』

きたまり+Offsite Dance Project共同プロデュース『RE/PLAY(DANCE Edit.)』多田淳之介演出、2014年2月14-16、急な坂スタジオホール 14日、雪の中野毛山を上り、観ましたので考えたことのメモ。私は『再/生』からの一連の上演を観ていないので、『RE/PLA…

梅崎春生「桜島」

桜島・日の果て・幻化 (講談社文芸文庫) 作者:梅崎 春生 発売日: 1989/06/05 メディア: 文庫 「桜島」が発表されたのは1946年、戦後間もない頃である。題のとおり梅崎春生が終戦を迎えた地、桜島を主な舞台にした小説であるが、しかし物語は7月の坊津から始…

水村美苗『私小説―from left to right』

私小説―from left to right (ちくま文庫) 作者:水村 美苗 発売日: 2009/03/10 メディア: 文庫 大雪の夜の久遠に人の不幸が亡霊のように記憶に蘇る。 『私小説―from left to right』は冬の寒い夜、カーテンの締め切った部屋、読書灯の黄色っぽい明かりで読み…