映画

『耳をすませば』を経済的階級差を越える物語として見る

妻が録画していた『耳をすませば』を見るのに便乗してつい私も見てしまった。何度も見てきた作品だが、今までで一番落ち着いて見られた気がする。自身の思春期から遠く離れてしまったからだろうか……そして、落ち着いて見ていると、この映画に、同じ公立中学…

2022年に「ラブ&ポップ」を観る

ラブ&ポップ 三輪明日美 Amazon 映画「ラブ&ポップ」を見た。おもしろかった――古い、ということも含めて。 映画には、 決められた時間を守り、決められた場所をつなぐ乗り物。連れて行かれると言う感覚。毎日が昨日の繰り返し。明日が今日と違うとは考えら…

宇宙世紀に乗り遅れ——『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ 【Blu-ray特装限定版】 バンダイナムコアーツ Amazon 映画館でやっていたときから見たいと思っていたのだが、早くもAmazonプライムに出たと聞き、観た。 メカやアクションはかっこよく、ヒロインは萌える、期待どおりのガ…

映画『返校』がホラー映画である意味を考える

台湾映画の『返校』を見てきた。原作のゲームはデモ版? だけプレイしたことがあって、デモ版の序盤しかプレイしていないのかもしれないが、雰囲気はホラーだったもののお化けとかは出てこなかったから、雰囲気だけホラーなのかと思いつつ見にいったのだが、…

現実に負けている映画『そうして私たちはプールに金魚を、』

前々から気にはなっていたのだが、映画『そうして私たちはプールに金魚を、』をようやく見た。公式サイトから見ることができた。公式サイトを見ると仰々しい煽り文句が並んでいるが、改めて見ると、白けた気持ちになる。 狭山——埼玉、東京郊外、ロードサイド…

『シン・エヴァンゲリオン』シンジの新しい恋人について(ネタバレあり)

エヴァンゲリオン新劇場版には、真希波・マリ・イラストリアスという、アニメ本編には出てこないキャラクターがいた(漫画版のキャラクターではあるようだ)。萌える(?)女性キャラクターで、私もなかなか好きにはなったが、しかし、彼女は何のために登場…

『シン・エヴァンゲリオン』に泣く(微ネタバレ)

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を見てきた。まず、これまで見たことのない映像だと感じた。斬新なメカ描写で、斬新な戦闘描写だった。しかし、作品の出来としてどうこうではなく、すべてを理解してしまったという感覚があった。号泣した……と書きたいと…

行き場としての死者とまだ生まれていない者――諏訪敦彦『風の電話』

風の電話 発売日: 2020/10/26 メディア: Prime Video 諏訪敦彦監督の『風の電話』を観た。広島の原爆の物語から始まり、父親のいない(おそらく死んでしまっている)高齢出産、性的暴力未遂、難民の物語(日本の入国管理の問題)、そして東日本大震災の傷へ…

あるいは意図された誤配――岩井俊二『ラストレター』

ラストレター 監督:岩井俊二 発売日: 2020/07/15 メディア: Prime Video 一見さわやかな物語である。福山雅治演じる売れない小説家乙坂が、かつての恋人未咲やその妹裕里との高校時代の恋愛沙汰を思い出し、未咲の娘鮎美ともども未咲の自殺を乗り越え、小説…

落書きに泣く――『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』

私たちは、この点と線に共感できる。 『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』、お子様と親子に囲まれて見てきた。普通に泣けたし、周りの子や親が泣いているということ、人間が絵やぬいぐるみに共感して優しさを、愛を差し出せるということに泣け…

「ナワバリ」の神父と日本人――『哭声/コクソン』

哭声/コクソン (字幕版) メディア: Prime Video 素直にサスペンス・ホラー・エンターテイメントとして楽しめば良いのかもしれない。しかし、あえて、つまらない考察を試みたい。ナ・ホンジン監督の映画『哭声/コクソン』についてである。 「コクソン」は、…

井の頭公園の/のような映画――瀬田なつき『PARKS パークス』

PARKS パークス 発売日: 2017/08/15 メディア: Prime Video 橋本愛演じるヒロイン「純」の元へ、永野芽郁演じる準ヒロイン「ハル」がやってきて、かつて純の住んでいた部屋に住んでいたという写真の女性のことを教えてほしいと言う。成り行きでハルは純の部…

山戸結希の『溺れるナイフ』

溺れるナイフ 発売日: 2017/04/21 メディア: Prime Video 山戸結希監督『溺れるナイフ』は、小松菜奈、菅田将暉、重岡大毅、上白石萌音といった今をときめく俳優陣と、いかにも流行の量産される少女漫画原作の映画然とした予告映像と宣伝で、正直不安もあっ…

新海誠はスマホが苦手?――新海誠『君の名は。』

君の名は。 発売日: 2017/07/26 メディア: Prime Video 『君の名は。』を観てきた。観たらつらくなる気がし、少なくとも映画館で観るのは避けようと思っていたのだが、Twitterを見ているとやたらと評判が良く、仕方なく。結果としてかなり良かった。物語も画…

空の狭さ——荒井晴彦『この国の空』

この国の空 発売日: 2019/01/05 メディア: Prime Video 雑誌「映画芸術」2015年ベストテン1位、は出来レースという感じもしなくもないと思っていたのだが、観てみたら大変良かった。 タイトルは「この国の空」だが、とにかく空が映らない。正確には数えてい…

神/映像になったμ's――劇場版『ラブライブ!』

ラブライブ!The School Idol Movie 発売日: 2017/07/28 メディア: Prime Video 劇場版『ラブライブ!』を観てきた。基本的にあまり楽しめなかった。ひとつ考えたことがあったので感想といっしょに書いておく。 感想まずこれは、ストーリーにそれほど意味のあ…

蔦哲一朗『祖谷物語―おくのひと―』

祖谷物語-おくのひと- 発売日: 2015/08/04 メディア: Prime Video 早稲田松竹で観てきました。すげー良かった。一面の緑の中の、一面の白の中の武田梨奈の美しさよ……。これはストーリーをなぞるタイプの感想文です。 この映画には、決して姿は現さない、けれ…

山本政志『水の声を聞く』

水の声を聞く [DVD] 発売日: 2015/10/02 メディア: DVD ただただダークな映画である。"悪い"人々が勝ち、"善い"人々は救われない――いや、この映画を善い/悪いの枠組みで捉えるべきではないだろう。『水の声を聞く』の物語を動かす二項対立は真/偽、本物と…

来ないで——『ワンダフルワールドエンド』

ワンダフルワールドエンド 発売日: 2015/06/24 メディア: Prime Video 大森靖子「ミッドナイト清純異性交遊」「君と映画」のPVを発展させたような映画で、私のまわり(?)では大森靖子が出ているとか大森靖子が主題歌だというところで話題になっていたよう…

pura vida / the ridge――『アンナプルナ南壁 7400mの男たち』

アンナプルナ南壁 7400mの男たち(字幕版) 発売日: 2015/06/02 メディア: Prime Video 期待していた程おもしろくなかった。というのも僕は『アンナプルナ南壁 7400mの男たち』というタイトルを見て素直にアンナプルナの雄大な姿を期待していたのだ。しか…

“市川由衣の映画”――安藤尋『海を感じる時』

海を感じる時 発売日: 2015/04/03 メディア: Prime Video 池松壮亮と休憩中に懇談。洋が「女を殴る」ことについて、洋がイヤな男にしか見えなかったら映画として辛い、と私は危惧したが、池松はその「匙加減」には確信があるようだった。「ボクが邪魔をしな…

山戸結希『5つ数えれば君の夢』

5つ数えれば君の夢 発売日: 2014/12/03 メディア: Prime Video 山戸結希監督、東京女子流主演の映画『5つ数えれば君の夢』。東京女子流が最大の目当てだったわけですが、監督の山戸結希がサブカル界隈で話題になってた気もしたので、観に行きましたので軽く…

十年後と一年後——『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』

劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(フジテレビオンデマンド) 発売日: 2016/02/01 メディア: Prime Video 『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(公式サイト)、アニメ版についても感想を書いてたりする(こちら)のですが…

宮崎駿『風立ちぬ』

風立ちぬ [Blu-ray] 発売日: 2014/06/18 メディア: Blu-ray 普通のユーザーの感覚からすれば、風立ちぬは、戦争産業に従事したり恋人が結核で苦しんでたりするのにまったく主人公に葛藤がないのでびっくりするし、ちょっと共感しがたい(どこに共感すればわ…

新海誠『言の葉の庭』

言の葉の庭 発売日: 2014/11/15 メディア: Prime Video 新海誠監督の最新作『言の葉の庭』観てきましたーので行き当たりばったりに感想を。 簡単にあらすじを説明すると、まああんまり学校に行きたくない少年(友達とかは普通にいる)が雨の日、公園で朝から…

夜の朝ドラ——廣木隆一『きいろいゾウ』

きいろいゾウ 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video 妻・宮崎あおい、夫・向井理。朝ドラ的な配役である。『純情きらり』のヒロイン宮崎あおいの持っていた離婚騒動以前の圧倒的な「清純」イメージは往年の、そして今なお多数のCM出演の数からも認めら…

細田守『おおかみこどもの雨と雪』

おおかみこどもの雨と雪 発売日: 2018/04/25 メディア: Prime Video 宮崎あおいにつられて。 アニメ史、映画史的なものはわからないのだけど、きっと最先端にある映画なんだろうとは思った。アニメにしかできない表現ができているなって感じ。おおかみおとこ…

新海誠『星を追う子ども』

星を追う子ども 発売日: 2013/11/26 メディア: Prime Video のどかな日本の田舎、線路の上を歩くシーンで映画は始まり、日常は謎の化物と異世界から来た人間離れした能力を持つイケメン少年によってぶっこわされ、少女はその少年に恋に落ちる……。ここまでは…

片渕須直『マイマイ新子と千年の魔法』

マイマイ新子と千年の魔法 発売日: 2015/05/25 メディア: Prime Video 子どもは、思っているほど子どもじゃない。彼や彼女は立派に知恵を巡らせ、その小さな身体で立派に生きている。小さな足で、堂々と歩き、時に走り、時に迷って泣いてみたり、それでも環…