戦国時代のアイドル——『アイドル10年史』

映画秘宝EX激動!アイドル10年史 (洋泉社MOOK)

映画秘宝EX激動!アイドル10年史 (洋泉社MOOK)

  • 発売日: 2012/03/21
  • メディア: ムック
 

今流行っているアイドルたち、少し前に流行って消えたアイドルたちの背景、アイドル史的な位置を概観できる書。「20世紀アイドル前史」なんて記事もあり、アイドル史を学ぶ上で非常に便利な一冊なのでは。この10年の大半はハロプロが中心で、AKB48がブレイクしたのは2009ですから、半分以上ハロプロで構成されています。最近読みましたが4月発売の本だったんですね。それぞれのファンなら知ってる情報も多いのかもしれないが、わたしみたいなアイドルオタク始めたばかりの人間には助かる。概観して何になるんだと思う人が多いとは思うが、楽しい人には楽しい。「こいつらアイドルとして認知されてるんだ!」「こいつらこの頃からいたんだ!」ってのもけっこうあって楽しかったです。48系のアイドルたちも、ちゃんと見ておかないとなあなどと思ったり。勉強になりました。各アイドルについてそれぞれそのアイドルが好きなのであろう人が紹介文を書いているので、「見てみようかな」という気を起こさせる本ですよ。スキャンダルや人気の上位下位などの「悪い面」に一切言及されていないというのはもちろん欠点だろうと思いますが。

ハロプロファンでありBiSファンである私的におもしろかったのはBerryz工房に関する文、メンバー七人へのインタビューとプー・ルイのインタビュー。
Berryzは表紙も飾っちゃってますね。しかし移り変わりの激しい、若さを失えばすぐに消えてしまうようなアイドルの10年史の中、脱退はあったものの初期メンバーで8年間を生き延びているアイドル集団というのは確かにすごいと思いませんか。そんなベテランアイドルである彼女たちに惹かれる理由。勝山康晴氏は「破壊的だから」と表現しています。Berryzが並んだ時の統一感の無さは確かに破壊的かもですよね。だってももちがいるんですよ。熊井からももちまでですよ。

宗像明将「アイドル50年、戦国時代は本当にあったのか?」はアイドルを、またいわゆる「アイドル戦国時代」を冷静にとらえ、簡潔にまとめた良い文章だなと思います。
そしてBiSの紹介文を書いているのも宗像明将氏ですね。僕はここらへんのライターについてはもうまったく知識がありませんがたぶんこの人は業界では高名な人物なんだと思います(適当ですいません。。。)。しかしBiSの紹介文の中の「アイドルが危険なのは、裸体を見せることよりも、むしろ生身を見せてしまうことだ。」という一文や、先の文章においてもBiSに関するこの文章においても、アイドルが自らを消費する/される存在であることに意識的であることなど、鋭いなあと思います。あとアイドルへの愛をひしひしと感じます。にわかでごめんなさいって感じです。巻末にある各ライターの「2012年注目のアイドル」でも宗像明将氏は最初にBiSを挙げていて、勝手に親近感を(おい)。そこでも彼は「アイドルもそうした「現実」が背後に潜んでいる「非日常」に過ぎない。それをたびたび痛感しながら筆者はBiSを見続けることになるだろう。」と書いています。僕が前にBiSについて書いた感想文とだいたい同じことですよね!(もちろん僕の方が後です。)

そしてBiSのリーダーであるプー・ルイへのインタビュー。彼女やBiSメンバーへのインタビュー記事は以前からネットなどでも何度か見ていてその度に衝撃を受けていたのだが、このインタビューもかなりおもしろい。「とりあえず友情みたいなのがやりたかった(笑)。」「でもBiSもそんなに続かないんで。」などなど。BiSは僕にアイドルの再考を促してくれたアイドルで、贔屓している面もありますが、すごいんですよ。

こんな感じですか。ほとんど無視したページもありますが、おもしろかったです。ところでなぜ今10年史なのだろう? 南波一海氏はこの本の中で「ついに帝国の逆襲が始まった!」と副題をつけてハロプロを語ってます。信じたい。一方篠本634氏は「秋元康に死角なし!」。また宗像明将氏はローカルアイドルたちへの注目を促し「日本の少女はみんなアイドルになってしまうのか……と思ったらタイ人も!」などと言っています。きっと、2012年は何らかの分水嶺なのでしょうね。NHKの石原真氏は本書に収められた対談の中で「「戦国時代」は終わっていて、みんなで押し上げていく時代だと思いますね。」と語っている。プー・ルイなりモー娘。の9期の某ハロヲタなり、またAKB48のように、かつてアイドルに憧れた、アイドルオタクだった少女たちがアイドルをやっている昨今である。アイドルたちが押(推?)し上げあった先が、2012年以降にあるのだろう。BiSによって露呈された「アイドルの生身」への意識をもって、アイドルシーンを見つめ続けていたい。

なんかかっこよくまとまった感ない?!