現実に負けている映画『そうして私たちはプールに金魚を、』

 前々から気にはなっていたのだが、映画『そうして私たちはプールに金魚を、』をようやく見た。公式サイトから見ることができた。公式サイトを見ると仰々しい煽り文句が並んでいるが、改めて見ると、白けた気持ちになる。

 狭山——埼玉、東京郊外、ロードサイドの閉塞と憂鬱。大学生だった私なら大変興奮したのだろうが、しかし、もう、こういうのに共感できなくなってきた。なぜかといえば、そのような閉塞的な現実の中で、大人として、私なりに生きているからだ、と言うよりほかない。

 しかし、共感はさておいても、女子中学生がプールに金魚数百匹を放ったという現実の事件に対して、そうした土地に生きる平凡な女子中学生の閉塞感というような動機(「そうして」)の想像は、完全に負けているだろう(さらに言えば、「女子中学生」という現実に、女優たちも負けているだろう)。半時間程の短編映画に、破綻させずにこれだけの演出を盛り込み、その凝縮された完成度はやはりすごいのだろうが、このつまらない脚色(「そうして」)がなければ、もう少しおもしろかったのではないか……。