文具放談

 もう何年も前のことだが、学生の時分、教育実習に行った学校で、子どもたちがみんな、テープのりを使っていた。スティックのりはわずかに生き残っていたが、液体のり等を使う者は皆無であった。私などは、テープのりの存在は知っていたけれども、かつて、彗星のごとく登場し、液体のりから格段に便利になったスティックのりに、まさかこの新顔が勝るものであるはずがないと、使わないでいた。しかし、子どもたちがみんな使っているものだから、つい買って使ってみると、これがとんでもなく便利で、いまや、テープのり以外は、持ってすらいない。

 

 そんなパラダイムシフトは、やはりしばしば生徒を観察していて起きるもので、最近は生徒たちがコクヨの「復習がしやすいプリントファイル」というものを使っているのを発見し、買って自分の授業用の資料を挟み始めたのだが、これがまたものすごく便利である。これまでは普通のクリアファイルに挟んでいたわけだが、教卓の上に数枚広げてしまって、授業終了後大急ぎでしまったり、時にはしまう暇もなかったり、そうすると順番も向きもごちゃごちゃになって、プチストレスであった。しかしこの「復習がしやすいプリントファイル」は、まず開いて2枚は同時に見ることができ、クリップでとじたままめくって次のプリントを見ることもでき、とにかく、スムーズに授業を始め、終えられるようになった。

 

 結局、生徒にとって良いものは、教員にとってもいいものなのだ。そういえば最近は、教材研究用に、ユニボールワンという、三菱鉛筆の、「記憶に残りやすい」等とうたったゲルインクボールペンを使い始めた。気分として、私は、普通の油性の赤や青や緑を使っていたくなく、プリントや教科書への書き込みにも、万年筆を使ってみたり、4Cの珍しい色のリフィルを使ってみたり、色々と試してきたが、結局この、今のところ手に入れやすく、扱いやすく、記憶に残るかはさておき発色が良くぱっと見て認識しやすい、ユニボールワンに落ち着くかもしれない。

 

 おまけだが、もう1つ、これは教場とは関係なく、最近使い始めてまあまあ感動したものに、スライドクリップというものがある。用途はダブルクリップ等と同様で、いわゆるゼムクリップでは収まらない枚数の紙を留めておくのに使うわけだが、このスライドクリップの利点は、とにかく、留めていてかさばらないことにある。例えばメモ帳として使っているリングノートで、使っていないページがすぐに開けるよう、使用済みのページを留めているのだが、スライドクリップで留めれば、かさばらず、比較的書きやすい。

 

 まったく、知らないうちに、知る人ぞ知る文房具が誕生しているものである。