ロロ「ミーツ」、ハイバイ「て」、燐光群「帰還」、白山羊の会「効率の優先」

ロロ「ミーツ」、ハイバイ「て」、燐光群「帰還」、白山羊の会「効率の優先」の四本を観ました。岡崎芸術座「ブラックコーヒー」も観に行きたかったのですが日程が合わず断念。観たかったよ……。

ロロ「ミーツ」
素直じゃない物語。奇妙な怪獣に出会った少年の物語と、少年の両親の物語が交錯する。
少年の父親は実在しない追手から逃げ続け、逆に追手を追い求めている。母親は彼の好きだった缶コーヒーを父親に見立て家で少年を育てている。そして父親が少年の出会った怪獣を追手と見立てる、という物語の混じり方がもう少し複雑に行われる。ロマンチックなシーンもあって、シナリオ上の仕掛けもうまくてまあ盛り上げるのですが、結局物語はみんな成就しないまま終わる。少年は化け物と別れることになり、父親と母親はせっかく再会しても、互いに気づかず、別れることになる。「ミーツ」という題のようにこれらの出会いが描かれているのですが、それは別れを常に孕むものであることを認識させるような、悲しみの残る劇でした。
印象に残ってるシーンが二つあって、一つは、怪獣は人間の言葉を話すのですが、それは少年の妄想である、ということになっています。こうした、怪獣の鳴き声に人間の言葉を当てはめることを怪獣が「レイプだよ」と、まあやはりそれも少年の妄想の言葉であるはずなのですが、人間の言葉で少年に訴えます。この言葉で少年は怪獣を飼うことを諦め、別れへと繋がっていく。少年の妄想は、「レイプだよ」と言わしめるように、少年にとって完全に都合よいわけではなく、ほとんど「言葉を与えている」と言っていいものなのですが、それさえも「レイプ」と彼女は言う。ここがおもしろかったです。深く考えられてませんけどね。
あと、クライマックスと言っても良いであろう、母親が缶コーヒーを積み上げ、それを偶然通りかかった父親が手伝い、しかしその缶の塔は、ある高さまで行くと、崩れる。そして二人は、互いに相手のわからぬまま、再び別れることになる。信じられないくらい美しいシーンで、全体的にギャグの散りばめられた演劇だったから、どうせこの後はベタに二人くっついてハッピーエンドだろうとほとんど確信していたのですが、それでも二人は別れていく。ここまで徹底して物語に抵抗するというのは、度胸あるなぁと思いました。
あと、この演劇、妙にエロかったです。母親が押し倒される(?)シーンがあったり、少年のことが好きな女の子が彼の尻の匂いを嗅いだり、先の「レイプ」発言もそうですが、エロいとは言い過ぎでもセクシャルである気がしました。怪獣の中には女性の役者が入っているわけですが、「レイプ」発言の後からは女性としか見れなくなって余計エロく見えてしまうという逆説的な、というかこれは仕掛けられたものなのか僕が勝手にそう見てしまったのかわからない部分ですね。

ハイバイ「て」
とってもおもしろいし泣ける(ひどい感想だ!)。祖母の葬式から始まり、時間を夕食前まで遡って、葬式へと至り、もう一度遡って、違う視点から再び葬式へと至る。こうした手法で、最初は兄弟たちに対して冷たい悪っぽいやつだと思われた兄の葛藤が明らかになったり、というのはけっこうよくあることなのだと思うのですが、この戯曲でそうして見せられたのは何か救いの無さであった気がします。観劇メモをなくした(意味ない!)ので曖昧なのですが、「離婚すれば済むと思っているのか」「何をしてもなかったことにはならない」といった台詞があります。岩井秀人演じる母の台詞ですが、まさにこれで、我々客には兄の葛藤がわかっても、物語の中の兄弟たちにはわからない。どんなにハッピーな感じで終わっても、それで悲しい出来事がなかったことになるわけではない、そうした悲しみを感じました。しかし、この演劇は「笑い」で終わる。そして、物語のいたるところで、ハイバイお得意のギャグが笑わせてくれる。登場人物たちもよく笑います。この「笑い」が、唯一の救いなのかもなぁとなんとなく思ったりもしました。どんな悲しみの中でも人間というものは笑えるんですよね。これは人間の強さであって、不謹慎などという言葉で非難されることもあるわけですが、素敵なことだと僕は思います。
ハイバイはDVDで「ヒッキー・カンクーントルネード」を観たことがあるのですが、「ヒッキー」では作者の個人的な引きこもり体験に言及しているのに対し、「て」では個人的な父親体験が問題となっているのかな、などと思ったりもしましたが詳しくはわからない。そういうとこについてはそのうち調べてみるかもしれません。

燐光群「帰還」
あんまりおもしろくなかった……。坂手洋二が政治的であるというのは十分に知っていましたが、ここまで来るとちょっと……って感じです。でも、最後の台詞はバシッと決まってて、さすがって感じです。

城山羊の会「効率の優先」
日本社会に対する風刺、と見れないこともないのですが、そんなこと考えるのめんどくせえって思っちゃう劇でした(誉めてるよ)。ある会社のある部署で、主に恋愛感情によって、最終的に二人が死ぬことになるのですが(笑)、女上司はあくまで仕事を続けようと主張する。しかし最終的にはその女上司も社内でセックスしちゃうという爆笑必至のストーリー。人の死ぬところとか、普通に笑えないし、笑えない問題群を扱っているようにも見えるのですが、それでもなんか笑ってた方が幸せなんじゃないかと、そんなことを思った劇でした。まずパンフレットからおもしろい(代表、の妻が挨拶を書いてる!)というのが驚異的だなと思いました。

感想にしろ何にせよもう少し頭使って書きたいものです。
来月は、TAICHI-KIKAKU、シベリア少女鉄道、FUKAIPRODUCE羽衣、スポンジの公演を観に行く予定。七月後半はテスト期間なのでそこも観劇の予定入れられないっすね。悲しい。では!