「オンライン授業」についてのメモ(コロナ禍で)

オンライン授業について。様々なアプリケーションやサービスが用意されているのだが。一つ思うのは、それらを使って、従来の授業をオンラインで再現しようとする必要はない、というか、そうしようとすべきではないのではないか、ということだ。 従来の、オフ…

「先入観」について(小松理虔『新復興論』の「福島県産品」問題に関連して)

新復興論 (ゲンロン叢書) 作者:小松理虔 発売日: 2018/09/01 メディア: 単行本 先入観を持つことは良くないことだと気がついた。何とか先入観を持たず、誰とでも対等でありたいのだが、どうすればいいか——そのような問いに出会った。 「先入観」が良くない結…

あるいは意図された誤配――岩井俊二『ラストレター』

ラストレター 監督:岩井俊二 発売日: 2020/07/15 メディア: Prime Video 一見さわやかな物語である。福山雅治演じる売れない小説家乙坂が、かつての恋人未咲やその妹裕里との高校時代の恋愛沙汰を思い出し、未咲の娘鮎美ともども未咲の自殺を乗り越え、小説…

落書きに泣く――『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』

私たちは、この点と線に共感できる。 『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』、お子様と親子に囲まれて見てきた。普通に泣けたし、周りの子や親が泣いているということ、人間が絵やぬいぐるみに共感して優しさを、愛を差し出せるということに泣け…

男子は友人を知らない——米澤穂信『本と鍵の季節』

本と鍵の季節 (集英社文芸単行本) 作者:米澤穂信 発売日: 2018/12/14 メディア: Kindle版 女子どうしの友情と比べると、男子どうしの友情は淡泊なものに見える。身体的接触は少なく、余程のことがなければ贈り物なんてしないし、電話で雑談なんてしないし、…

中学生が一人で国語を学ぶための本

不登校歴の長い中学生に、一人で勉強するための問題集がほしいと言われ、仕事の帰りに書店で探した。漢字なんかは東京ベーシックなどインターネット上にある教材で十分に自習できる。その子のレベルに合わせて、その子でも読めそうな説明・解説のついた、文…

近況/書くことについて

とにかく金がなく「New arrivals」も何もあったものではない。そして精神状態が悪くろくに本も読めない。積読から読める本を探し出し読んでは投げる日々である。 積読から『プレーンソング』を読んだ。金に余裕のある社会人と金のない学生ではない二十代の青…

アースシーの魔法=哲学と物語——『ゲド戦記』

ゲド戦記(6点6冊セット) (岩波少年文庫) 作者:アーシュラ・K. ル=グウィン 発売日: 2009/03/01 メディア: 単行本 作家アーシュラ・K・ル=グウィンは『ゲド戦記外伝』の「まえがき」でこう語っている。 まったく実在したことのない、つまり一から十まで完全…

情報は一冊のノートにまとめるべきか?——『情報は一冊のノートにまとめなさい』

奥野宣之『情報は1冊のノートにまとめなさい』 内容 主張はわかりやすい。あらゆる情報は、一冊のノートにまとめられるべきだというものである。デジタル関係の話はやや古いが、Evernote等、デジタル手帳がかなり使えるレベルになっている昨今、ある部分では…

塾講師が勧める学習法まとめ:高校国語古文編

はじめに→古典学習について過去に書いた文章。理論上、古文常識、古文単語、(敬語)、文法の順に土台となる。その上で主語を見破る力を身につければ古文は読める。が、音読や通釈など、学校でやるような地道な学習による古文慣れも、間違いなく影響する。古…

塾講師が勧める学習法まとめ:高校国語知識編

●漢字基本的に書いて覚える。一冊を何周も学習する。2〜3周か回したら書けないものにチェックし、書けないもののみを繰り返す。漢字の学習は語彙の学習にもなる。特に国語が苦手な場合、知らない熟語が出てきたならば漢字の練習をするだけでなく意味を調べ…

長く気持ち悪く痛々しい良質のライトノベル——『イリヤの空、UFOの夏』

【合本版】イリヤの空、UFOの夏 全4巻 (電撃文庫) 作者:秋山 瑞人 発売日: 2018/09/10 メディア: Kindle版 この小説はタイトルに反して?驚くほど爽やかではない。そしてライトでもない。 まず設定や登場人物たちが爽やかではない。軍事政権下のような情勢で…

塾講師が勧める学習法まとめ:高校英語編

私が自身の受験経験と数年の塾講師経験と何冊かの書籍から考えだした高校英語・大学受験英語学習法の現時点でのまとめである。しかし結局、誰にとってもベストの方法などあるはずもなく、自身が最も意欲的に取り組める方法で学習することが成績向上につなが…

A4裏紙の行き場――『ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング』

ゼロ秒思考 作者:赤羽 雄二 発売日: 2014/01/14 メディア: Kindle版 ●まとめるとあるテーマについて、A4用紙1枚に1分でアイデア(考え)を複数個書き出す訓練を日々重ねることで思考力がアップするというもの。 ●こんな人にオススメ・A4の裏紙が大量に発生…

可能性・辻褄の合わなさ・暴力――範宙遊泳『その夜と友達』観劇メモ

範宙遊泳『その夜と友達』はいくらかは人間的だった学生時代を経てクソみたいな大人になりつつある日本の私たちにとにかく刺さる。差別発言とかしちゃう人が大統領になって大丈夫なのかなどと言っていた過去(2017年頃)と、6色の造花を配っていたら逮捕される…

「ナワバリ」の神父と日本人――『哭声/コクソン』

哭声/コクソン (字幕版) メディア: Prime Video 素直にサスペンス・ホラー・エンターテイメントとして楽しめば良いのかもしれない。しかし、あえて、つまらない考察を試みたい。ナ・ホンジン監督の映画『哭声/コクソン』についてである。 「コクソン」は、…

井の頭公園の/のような映画――瀬田なつき『PARKS パークス』

PARKS パークス 発売日: 2017/08/15 メディア: Prime Video 橋本愛演じるヒロイン「純」の元へ、永野芽郁演じる準ヒロイン「ハル」がやってきて、かつて純の住んでいた部屋に住んでいたという写真の女性のことを教えてほしいと言う。成り行きでハルは純の部…

東北から病室まで

三月、ふと思い立ち東北へ行った。初日は新幹線で一関まで行き、電車やらBRTやらを乗り継いで、陸前高田の「奇跡の一本松」を観た。低い土地はおおかたすべて流されてしまったか破壊され片付けられてしまったのだろう、陸前高田の役所のあたりから下って…

福島の今、過去から未来へ――チャレンジふくしまパフォーミングアーツプロジェクト『タイムライン』藤田貴大

チャレンジふくしまパフォーミングアーツプロジェクト『タイムライン』演出:藤田貴大、音楽:大友良英、出演:ふくしまの中学生・高校生 1 福島の今 『タイムライン』において、「なんともない日々の わたしたちのタイムライン」から始まる、フライヤーに…

入試国語現代文への二つのアプローチ――『現代文 標準問題精講』

現代文 標準問題精講 作者:神田 邦彦 発売日: 2015/07/22 メディア: 単行本 私は自身の勉強として現代文の参考書を用いたことがない。現代文で困ったことがないからだ。他の教科に時間をかけた方が効率が良かった。しかし、そうしたこともあってか、進学塾で…

高校演劇サミット2016

‪こまばアゴラでやっていた高校演劇サミットという企画で、都立駒場高校、甲府南高校、精華高校の演劇を観た。それぞれについて思ったことのメモを記しておくが、我ながら、彼らを高校生として見てしまっている、上からのコメントになっている。まあ彼らは高…

山戸結希の『溺れるナイフ』

溺れるナイフ 発売日: 2017/04/21 メディア: Prime Video 山戸結希監督『溺れるナイフ』は、小松菜奈、菅田将暉、重岡大毅、上白石萌音といった今をときめく俳優陣と、いかにも流行の量産される少女漫画原作の映画然とした予告映像と宣伝で、正直不安もあっ…

森見登美彦『夜行』のホラー

夜行 (小学館文庫) 作者:森見登美彦 発売日: 2019/10/04 メディア: Kindle版 森見登美彦の『夜行』を読んだ。正直に言って森見登美彦のこれまでの小説の方が好きだ。しかし、やはりよくできている。 小説は第一夜〜題五夜の五つの章に分かれている。それぞれ…

マームとジプシー『クラゲノココロ』『モモノパノラマ』『ヒダリメノヒダ』について三点

ハスキーさんに書けと言われた(?笑)ので書いたものです。ハスキーさんのブログ「カフェインとレコーズ」にも掲載されています。ハスキーさんの書かれた同作への劇評はこちら。 2016年9月18日、さいたま芸術劇場で観劇。思ったことを三点。しかし、観劇し…

新海誠はスマホが苦手?――新海誠『君の名は。』

君の名は。 発売日: 2017/07/26 メディア: Prime Video 『君の名は。』を観てきた。観たらつらくなる気がし、少なくとも映画館で観るのは避けようと思っていたのだが、Twitterを見ているとやたらと評判が良く、仕方なく。結果としてかなり良かった。物語も画…

アリストテレス「詩学」と現代演劇

アリストテレース詩学/ホラーティウス詩論 (岩波文庫) 作者:アリストテレース,ホラーティウス 発売日: 1997/01/16 メディア: 文庫 数千年前、まだこの世にドラマ=演劇などという概念のなかった時代の「演劇」論。 例えばカタルシスなんて言葉、俗に使わ…

私たち演劇(?)――本谷有希子×飴屋法水@VACANT

8月9日、VACANTで本谷有希子×飴屋法水を見てきた。思ったことなどのメモ。ちょっと時間を空けすぎて、かなりうろ覚えかつ、事実関係も怪しい気がするので読む方は注意。 私には単純に退屈な時間が長く、見ているのがなかなかつらい演劇だった。物語らしい…

あの時期に買った懐中電灯

魔法が使えないなら死にたい アーティスト:大森靖子 発売日: 2013/03/20 メディア: CD メジャーデビューしたあたりから不思議と大森靖子の情報が入ってきていない。調べてみたら盛んに活動しているようである。単に僕が興味を失ってしまったようだ。しかし前…

『This War of Mine』レビュー

This War of Mine - 11 bit studios s.a. 私がプレイしたのはiOS版だが、WindowsやMacでもプレイできるようである。 ゲーム性もさることながら、設定、ビジュアル、BGMから醸し出される雰囲気がとてもいい。 舞台は反乱軍に制圧され、政府軍に包囲されたある…

空の狭さ——荒井晴彦『この国の空』

この国の空 発売日: 2019/01/05 メディア: Prime Video 雑誌「映画芸術」2015年ベストテン1位、は出来レースという感じもしなくもないと思っていたのだが、観てみたら大変良かった。 タイトルは「この国の空」だが、とにかく空が映らない。正確には数えてい…